「取得と変換」のメリット


Excel 2016で標準機能として搭載された「取得と変換」機能は、われわれExcelユーザーにどんなメリットを与えてくれるのでしょうか。

今までは、Excelで何らかの結果(成果物)を作るために、まず元になる各種のデータを、Excelで開かなければなりませんでした。開いたデータの中には、処理に必要なものだけでなく、多くのデータが混在しています。また最近では、扱うデータの量も肥大化しています。元データのファイルが数十個あることも珍しくありません。Excelのブック(xlsx)形式だけでなく、CSVだったり、Accessのデータだったり、基幹システムから直接取り込んだり。そうした種々雑多の元データに対して、Excel上で、抽出・分類・加工・編集・計算をして、Excel内に結果を作ります。これが、今までの流れでした。

もし、元データのファイル名や形式が変わったら、取り込むためのマクロをそのつど変更しなければなりません。そういう質問を星の数ほど受けてきました。また、データの配置や書式などが変わったら、分類や抽出するために高度な数式を使わなければなりません。そういう質問を数え切れないほど受けてきました。

「取得と変換(Get & Transform)」は、データを自動的に"取得"してくれて、それらのデータをExcelが扱い安いように"変換"してくれます。それで仕事が終わるわけではありません。よく「取得と変換を使えば、もうマクロとか関数とか必要ないね」という声を聞きますが、それは実務を甘く考えすぎです。実務はそんなに単純ではありません。100%はできません。でも、あと少しの80%(当社比)くらいまでやってくれます。残りは20%(当社比)です。それだけでも、今までの業務が劇的に簡略化されます。

「取得と変換」を上手に使うと、業務が簡略化され、同時に間違いも減るでしょう。VBAのコードを書いたり、難解な数式を作る必要もありません。これほど便利な「取得と変換」ですが、インターネットや書籍などでは、ほとんど情報がありません。たまにブログなどで見かけても、ほとんどは「サーバー目線」や「データベース目線」の内容ばかりです。ExcelにはExcelの考え方があります。ここでは、Excelユーザーにとって、この「取得と変換」を、どう使うべきかを「Excel目線」で解説します。たとえば、Power Queryエディタには、数値や文字列を操作する多くの関数が用意されています。しかし、Excelユーザーがそれを新しく覚えて、慣れない関数に四苦八苦する必要はありません。計算だったらExcelでやればいいんです。それこそExcelにとっては真骨頂。使い慣れたSUMIF関数やCOUNTIFS関数を使えばいいんです。また「取得と変換」はExcel開発チームではなく、SQL Serverの開発チームが主に作っています。どうしても、用語や使い勝手がデータベースよりになっています。正直言って、表計算ソフトであるExcelユーザーには馴染みのない表現や、意味の分からない機能もたくさんあります。だったら、無理をしてそれらを使わなくても、80%(当社比)を落として70%(当社比)くらいまでにして、残りは得意のピボットテーブルで集計するのも手です。われわれの目的は「取得と変換」機能のエキスパートになることではなく、業務を遂行することです。何を使ったって、望む結果を得られれば誰にも文句は言われないでしょう。

Excel 2016は毎月機能が拡張されています。この「取得と変換」も例外ではありません。リボンの配置が変わったり、新しい機能が追加されたり、それまでできなかったことができるようになったり(反対もあります)。正直に言いますが、私も完璧に分かっているわけではありません。新しい使い方や情報を得たら、そのつど書き足していきます。