前回と前々回で紹介した条件付き書式の機能は、どちらも簡単にルールを作成するための"用意された"メニューです。今までのように自分でルールを作れば、用意されたものより柔軟な条件付き書式を設定することが可能です。
従来の条件付き書式では「ルールの作成画面」と「ルールの管理画面」を同一のダイアログボックスで行っていました。Excel 2007では、これらが分割されました。図1がルールを作成するダイアログボックスで、図2が管理するダイアログボックスです。
(図1)
(図2)
新しいルールを作成するには、まず「ルールの種類」を選択します。
1.セルの値に基づいてすべてのセルを書式設定
「データバー」や「カラースケール」「アイコンセット」のように、そのセルが範囲内で相対的にどの位置にあるかによって書式が適用されます。
2.指定の値を含むセルだけを書式設定
「○○より大きい」とか「○○と××の間」のように、セルの値によって書式が設定されます。従来の条件付き書式に似た感覚で設定できるでしょう。ここではさらにどういう種類の値を対象にするかを選択できます。
[セルの値] 従来の条件付き書式と同じです
[特定の文字列] 指定した文字列が「含まれる」「で終わる」などです
[日付] 昨日紹介した記事の図(3)と同じ範囲を指定できます
[空白] 空白セルが対象になります
[空白なし] 空白でないセルが対象になります
[エラー] 数式がエラーを返しているセルが対象になります
[エラーなし] 数式がエラーを返していないセルが対象になります
3.上位または下位に入る値だけを書式設定
上位または下位からみて「n項目」または「n%」のデータが対象になります。
4.平均より上または下の値だけを書式設定
選択範囲の平均値「より上」「より下」または「より1標準偏差上」などを選択できます。
5.一意の値または重複する値だけを書式設定
セル範囲内で一意(ユニーク)なセルや、重複しているセルが対象になります。
6.数式を使用して、書式設定するセルを決定
今までの条件付き書式のように、指定した数式がTRUEになる場合に書式が適用されます。
ルールの管理には、いくつかの工夫が用意されています。
たとえば「セルの数値が1より大きい」と「セルの数値が100より小さい」という2つのルールが設定されているセルに「50」を入力したような場合です。
新しい条件付き書式のルールは、ワークシートやテーブルごとに管理されます。
たとえば3つのルールを設定したとします。
(1)セルの数値が1より大きかったら赤で塗りつぶす
(2)セルの数値が50に等しかったら外枠に赤罫線を引く
(3)セルの数値が100より小さかったらフォントを青の太字にする
このセルに「50」を入力したとき、すべてのルールに一致しますので3つの書式が適用されます。ここで、(2)のルールに一致した時点で残りのルールを停止できるようになりました。
設定できるルールの数に制限はなくなりました。開発チームの条件付き書式を担当していた方が言うには「搭載メモリによる」ということでしたので、実質"無制限"と考えてもいいでしょう。
新しい条件付き書式を触って「とても高機能になった」と感じました。「データバー」や「カラースケール」などは、Excelの新しい使い方が発見されるかもしれない新機能です。できれば、条件付き書式の一括オン/オフをワンタッチで切り替えられると更に便利だったでしょうね。Microsoftのデモでやるように、セルの数値に応じてセルの塗りつぶし色がグラデーションで表示されるシカケは、値を視覚化するという意味でグラフに近いです。であれば、おそらく、パッと見て数値の傾向を把握したあとは、普通のワークシートにも戻って作業を続けるような使い方が一般的なはずです。いつまでのキレイなグラデーションを見ていても仕事になりませんからね。
また、とても高機能になった条件付き書式ですが、同時に「わかりにくくなった」という印象も否めません。ルールを作るための道筋が多すぎて、そもそも条件付き書式とはどういう機能なのか?何が出来るのか?という全体像が把握しにくくなっています。「セルの値が○○」という従来のルールと、「セルの値が範囲内で相対的に○○」という新しいルールは、考え方が異なるためビギナーに教えるときは、よほど上手な解説が必要になると思われます。